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ビューティコラム

FGF5タンパク質と脱毛の関係

■この記事の監修者

監修・ライター
行方昌人 Namekata Masato
理学博士
1979 年生まれ。
専門分野:細胞生物学、細胞工学、毛髪科学

アドバンジェンではFGF5タンパク質に注目して研究しています。

FGF5タンパク質は毛髪の成長サイクルを大きく変える力を持つことが知られていて、薄毛の原因として注目しています。

FGF5タンパク質は毛髪の成長サイクルのなかでどのように働き、また男性型脱毛症(AGA)などをはじめとする脱毛症とどのように関係しているのでしょうか? これまでの研究と世界的な科学論文誌に投稿された内容から詳しく解説したいと思います。

目次

FGF5タンパク質は毛包を退化させる

毛髪を作り出す器官は毛包と呼ばれ、たくさんの種類の細胞によって構成されています。これらの細胞は毛髪が成長するのに欠かせないタンパク質を作り出し、毛髪のもととなる細胞を増やすことや毛包器官を大きく保つことに使われています。

一方で毛包を構成する細胞の中には細胞死を引き起こす性質をもったタンパク質を作り出すこともあり、これが引き金となって、毛包器官が退化してしまい毛髪成長の停止と一定時間の休止状態に陥ります。

こうして各細胞が働く結果、毛周期という一連のサイクルを生み出し、毛包器官の成長‐退行‐休止を繰り返すことになります。

この中で、FGF5タンパク質はどのような働きを持つのでしょうか?

この疑問に対してまず大きなインパクトを与えたのは1994年のCell誌に投稿された研究報告1)でした。

筆者らは遺伝子工学を用いてFGF5タンパク質が機能しない実験マウスを作製しました。

するとそのマウスの体毛が通常のマウスよりも長毛であることがわかりました。

これは後の研究からFGF5タンパク質が機能しないと毛包器官の成長期間が長く維持されていることがわかり、FGF5タンパク質が毛周期を制御する重要なタンパク質であることがわかりました。

イヌやネコの品種またはウサギの一種には長毛になる性質をもつ動物がいることが知られていますが、これもこれまでの研究により、長毛になる動物にはFGF5タンパク質の機能に異常があることがわかってきています。

ヒトにおいてはどうでしょうか?

2014年に投稿された科学論文2)において、先天的にまつ毛が長毛なヒトの調査によりFGF5遺伝子に異常が見られ、FGF5タンパク質機能の欠失が予測されました。 この科学論文では、さらに正常な毛包器官をシャーレ上で培養することでFGF5タンパク質の機能を観察しており、FGF5タンパク質は毛包器官を退化させ、毛の成長を止めてしまうということが明らかになりました。

FGF5タンパク質はどこに?

毛包器官の退化がFGF5タンパク質によって生じることがわかりましたが、いったいFGF5タンパク質はどの細胞で作られているのでしょうか?

FGF5タンパク質が作られる場所は1994以降から現在に至るまでの研究報告で毛根部にある一部の細胞であることがわかってきました。

特に近年の解析技術の高度化によって細胞一個からの解析が可能になってきて、より精度高くFGF5タンパク質を作り出す細胞の居場所がわかるようになりました。

ここ数年の間に報告された研究データ3)、4)では、FGF5タンパク質を作り出す細胞は毛包器官の司令塔として働く毛乳頭の近くに存在していることがわかり、FGF5タンパク質が毛乳頭へ作用することができる距離関係にあることが推測されます。

また、毛乳頭細胞にはFGF5タンパク質の受容体を持っていることがわかっており、FGF5タンパク質の毛乳頭細胞への作用が毛包器官の退化に寄与している可能性があります。

毛根部にある毛乳頭細胞は毛周期を調節する重要なタンパク質を作り、毛包器官の成長や退化、そして毛のもととなる細胞の増殖を誘導する役割を担っていることがこれまでの研究によって明らかになっています。

この毛乳頭細胞の役割を指示するのは毛乳頭細胞の近くにいる細胞やその細胞が作るタンパク質です。 アドバンジェンでは毛包器官の退化においてFGF5タンパク質が毛乳頭細胞への指示を担うのではないかと考え、研究を行っています。

遺伝子が決める髪の個性

長毛であることはFGF5遺伝子の異常によってFGF5タンパク質が本来の機能を果たさないことが大きいことがわかってきました。

一方で毛髪には毛の長さだけではなく、カールした毛やうねりなど様々な個性が存在します。

これはいったいどのように生じるのでしょうか?

2009年のScience誌に報告された論文5)では、犬の品種によって異なる毛の性質と遺伝子の違いについて調べた結果、毛の長さはFGF5遺伝子、毛の硬さ(剛毛)はRSPO2遺伝子、毛のくせはKRT71遺伝子に違いがあり、調べた犬種の毛の性質に相関していることがわかりました。

つまり毛の個性が決まった遺伝子によって大きく左右されることが推測されます。 薄毛同様に悩みが多い髪質ですが、これも遺伝子が大きく関係しているかもしれないところは面白いですね。

脱毛症とFGF5遺伝子

毛の個性に遺伝子の違いがあるのと同様に脱毛症においても原因(リスク)が遺伝的な背景にあることが近年わかってきています。

男性型脱毛症(AGA)は毛周期を繰り返す過程で毛の成長期間が短くなり、休止状態の毛包器官が増えてしまう病態です。

その原因とされるのが主に遺伝と男性ホルモンであることが知られていますが、この遺伝的背景によるリスクは多因子性であるとされ、これまでに多くのリスク遺伝子が候補として挙げられてきています。

その中でFGF5遺伝子は、2017年のNature誌6)で大規模な遺伝統計調査からAGAリスク遺伝子のひとつとして報告されました。

FGF5遺伝子の異常は毛の成長期間に大きく影響することを述べましたが、AGAにおいてもそれがリスクとなりえる可能性があるということが初めて示されました。 この科学論文ではFGF5遺伝子が新規治療法開発に対する有望なターゲットのひとつであることを述べられており、ますますFGF5遺伝子、タンパク質についての毛髪科学研究の発展が望まれるところです。

まとめ

アドバンジェンが創業以来注目してきたFGF5タンパク質についてお話してきましたが、いかがだったでしょうか?

本来持っている毛の成長期間を目指す薄毛対策や予防として、FGF5タンパク質は大いに注目するべきターゲットです。 アドバンジェンでは基礎研究を含めた開発を進め、髪の健康を提案していきます。

参考文献

下記の科学論文はアメリカやイギリスで発行されている世界最高峰の学術雑誌から引用しています。

1. Hebert, J. M., Rosenquist, T., Gotz, J. & Martin, G. R. FGF5 as a Regulator of the Hair Growth Cycle: Evidence from Targeted and Spontaneous Mutations. Cell 78, (1994).

Martinの研究チームはカルフォルニア大サンフランシスコ校で、FGFの機能についての研究に大きく貢献しています。また、幹細胞を単離する研究においても先駆的であることが知られています。

2. Higgins, C. A. et al. FGF5 is a crucial regulator of hair length in humans. Proc. Natl. Acad. Sci. 111, 10648–10653 (2014).

Higginsは皮膚科学研究のスペシャリストの一人です。毛包を構成する細胞固有の機能や特性を研究していて、特に毛乳頭細胞の毛成長における機能研究に大きく貢献しています。

3. Yang, H., Adam, R. C., Ge, Y., Hua, Z. L. & Fuchs, E. Epithelial-Mesenchymal Micro-niches Govern Stem Cell Lineage Choices. Cell 169, 483–496 (2017).

4. Joost, S. et al. The Molecular Anatomy of Mouse Skin during Hair Growth and Rest. Cell Stem Cell 26, 441-457.e7 (2020).

実験マウスを用いて毛包を構成する細胞の特徴を解析するために、細胞一個からの解析を行い数十種類以上にも及ぶ細胞の“個性”を可視化しており、細胞の機能を予測するための大変貴重なビッグデータを提供しています。

5. Cadieu, E. et al. Coat variation in the domestic dog is governed by variants in three genes. Science 326, 150–153 (2009).

80種類に及ぶ犬種から毛質に関する遺伝子の違い(変異)を特定し、3つの遺伝子(FGF5, RSPO2, KRT71)によってほとんどの犬種の毛質を説明できることがわかりました。

6. Heilmann-Heimbach, S. et al. Meta-analysis identifies novel risk loci and yields systematic insights into the biology of male-pattern baldness. Nat. Commun. 8, (2017).

男性型脱毛症におけるメタ解析(複数の研究結果を統合して分析)によって新たに発見されたリスク遺伝子候補が報告されました。世界中の研究成果を統合することで10000例を超える大規模な遺伝子解析から候補遺伝子としてFGF5が挙がりました。

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監修者、ライター紹介

監修
荒瀬誠治 Arase Seiji
徳島大学医学部皮膚科学分野 名誉教授
毛髪疾患の専門医師として円形脱毛症診療ガイドライン作成委員長や、日独皮膚科学会会長を務めるなど、日本を代表する毛髪医療のスペシャリスト。
1947年生まれ。1974年徳島大学医学部卒業後、同大学皮膚科入局。1991年徳島大学医学部皮膚科教授となり、現名誉教授。
専門分野:皮膚付属器の文化機構(特に毛包の生物学)、光と皮膚(特に紫外線発癌、DNA修復、癌抑制遺伝子)

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監修・ライター
西村リサ Nishimura Risa
株式会社 sandalista 代表取締役
毛髪診断士認定講 師・コスメコンシェルジ ュ・WEB ライター
大手化粧品メーカーでメイクアップアーティストとして活動後、2008 年に独立。
自身の世界観を具現化するべく「sandalista(サンダリスタ)」を主宰。
スキンケア、ヘアケアに関する執筆活動や、講演、個別レッスンを通じ 多くの方に「善い美容週間の定着」を提案している。

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監修・ライター
横田淑美 Yokota Yoshimi
株式会社アドバンジェン 製品開発部部長
2008年株式会社アドバンジェン入社。「今日という日を、思いっきり楽しんでもらいたい」という願いを込めて製品開発に注力している。
1988年京都大学大学院・生命科学研究科修士過程終了(遺伝子操作・タンパク質解析研究)。1988年国内医薬品メーカー・応用生化学研究所入所。バイオセンサーの工業化に成功。2005年(国研)産業技術総合研究所勤務。バイオセンサーの研究に携わる。

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行方昌人 Namekata Masato
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1979 年生まれ。
専門分野:細胞生物学、細胞工学、毛髪科学

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