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ビューティコラム

鳥肌で発毛!?交感神経と発毛のつながり

■この記事の監修者

監修・ライター
行方昌人 Namekata Masato
理学博士
1979 年生まれ。
専門分野:細胞生物学、細胞工学、毛髪科学

「寒いっ!」と凍えたときや恐怖、驚きを感じたときにできる鳥肌ですが、これが発毛につながるようなのです。

鳥肌は交感神経による興奮、緊張によるものですが、これが毛包にも働きかけて、発毛を促すことが昨年の科学論文誌であるCell誌1)に掲載されました。 はたしてどのように発毛に影響するのでしょうか。

目次

交感神経と副交感神経

まず、神経について簡単に説明します。

神経は大きく分けると脳脊髄神経系と自律神経系があり、前者は手足を動かしたり、痛みを感じる神経であり、後者は自分の意志ではコントロールできない神経で臓器や血管などの働きを調節して体内環境を整える神経です。

自律神経はすべての臓器、血管、分泌腺を支配していて、呼吸や胃での消化、発汗などあらゆる場面で働いています。

自律神経系には交感神経と副交感神経があり、これは一つの器官について互いに相反する働きをします。

例えば、目では交感神経が活発になると瞳孔が開き、副交感神経が活発になると瞳孔は縮小します。 このように交感神経は緊張状態や興奮状態、ストレスによって作動し、副交感神経はリラックス時や休息状態時に作動しています。

毛包に接続する立毛筋と交感神経

皮膚における交感神経はどうなっているでしょうか。 皮膚には立毛筋という毛包に接続している筋線維束があり(図)、この周囲に交感神経が密接に存在しています。

寒感刺激や興奮状態などによって交感神経が活発化すると、立毛筋は収縮して、接続している毛包にも働きかけて毛が直立し、毛穴周辺に隆起を生じることでいわゆる鳥肌という現象がおこります。

一方で、毛包には新たに毛再生するために必要な幹細胞が多く貯蔵されているバルジ(膨らみ)領域があり、この領域は毛の成長や退行、休止といったどの毛周期においても失うことはありません。

立毛筋が毛包に接続していることは述べましたが、実は立毛筋と接続している場所はバルジ領域なのです。 つまり、毛包が成長する、発毛するうえで必要な幹細胞と立毛筋が密接であり、これは立毛筋周囲に密接にある交感神経束も幹細胞と関わりがある距離感にあることが予測されます。

鳥肌によって分泌するノルアドレナリンと毛包幹細胞

ハーバード大学のYa-Chieh Hsu研究室は、実験マウスを使って、立毛筋周囲の交感神経を薬剤や遺伝的に除去すると毛包の再生がなくなることを発見しました1)

つまり、交感神経が何らかの作用で発毛に影響していることがわかりました。

そこで研究グループはその機能性を調べたところ、交感神経と毛包の幹細胞の間に密接なやり取りがあることを突き止めました。

これは交感神経から分泌される神経伝達物質ノルアドレナリンに応答する受容体が毛包幹細胞に存在し、この応答が発毛を促すことになっていたのです。

つまり、交感神経は立毛筋が収縮する作用だけでなく、毛再生においても作用することが証明されました。

ここまでの研究はひとつひとつの事象について詳細に実験証明を重ねていましたが、立毛筋、交感神経、毛包の3つの関わり合いで本当に毛包の再生に影響があるのでしょうか。

研究グループは実験マウスを寒冷環境に置き、鳥肌をつくるとマウスの毛の再生が促進されるかどうかを検証しました。

すると、寒冷環境で鳥肌をつくったマウスのほうが明らかに発毛促進している事が実証されたのです。 よって、立毛筋、交感神経、毛包の3つの関わり合いで毛包の再生に対して影響することが証明されました。

交感神経と毛包の深いかかわり

交感神経と毛包の関わりは今回紹介した毛包幹細胞だけでなく、毛の色となるメラニンを産生する色素細胞へと分化するメラノサイト幹細胞にも影響することが知られています。

これは重度のストレスによる交感神経の過剰な活発化でメラノサイト幹細胞が枯渇化してしまい、毛包色素細胞が作れなくなることで白髪になってしまうことをYa-Chieh Hsu研究グループが報告しており2)、話題になりました。

つまり、毛包幹細胞においては発毛、メラノサイト幹細胞においては白髪と一見すると正負の効果が交感神経の働きによって生じています。 これは毛包幹細胞とメラノサイト幹細胞の間でノルアドレナリンの感受性に差があることをYa-Chieh Hsu研究グループは推測しており、この感受性の差がどのようにコントロールされているかは今後の研究が期待されます。

まとめ

ストレスなどによって作動する自律神経と髪の健康はいろいろ接点が多いと感じている方も多いと思います。

今回紹介した研究報告をはじめ、近年の研究成果から神経と毛包が大きく関わりを持っていることがわかってきました。

鳥肌が発毛促進であるということは、寒い場所で過ごしていれば毛深くなるのか…怒りっぽい人は毛深いのか…いろいろな事象が髪の健康に影響する中でそううまくいくとは考えにくいですが、都市伝説的な想像も掻き立てられます。

逆に一見都市伝説的な髪にまつわる事象が今後大きく毛髪科学を発展させることがあるかもしれません。

ユニークな着眼点からブレイクスルーすることは科学の中では多く、私も散髪に行っては床屋さん目線のいろいろな話を聞き、刺激をもらっています。 新たな発想から毛髪科学が発展し、髪の健康に還元できる研究を目指していきたいとアドバンジェンは考えています。

参考文献

ハーバード大学のYa-Chieh Hsu准教授の研究グループは皮膚における幹細胞の挙動と調節について研究しており、交感神経と毛包幹細胞、メラノサイト幹細胞の関わりについてインパクトのある成果を上げており、若手ながら非常に勢いがあります。

1. Yulia Shwartz, Meryem Gonzalez-Celeiro, Chih-Lung Chen, H. Amalia Pasolli, Shu-Hsien Sheu, Sabrina Mai-Yi Fan, Farnaz Shamsi, Steven Assaad, Edrick Tai-Yu Lin, Bing Zhang, Pai-Chi Tsai, Megan He, Yu-Hua Tseng, Sung-Jan Lin and Ya-Chieh Hsu. Cell Types Promoting Goosebumps Form a Niche to Regulate Hair Follicle Stem Cells. Cell 182, 578-593 (2020).

2. Bing Zhang, Sai Ma, Inbal Rachmin, Megan He, Pankaj Baral, Sekyu Choi, William A. Gonçalves, Yulia Shwartz, Eva M. Fast, Yiqun Su, Leonard I. Zon, Aviv Regev, Jason D. Buenrostro, Thiago M. Cunha, Isaac M. Chiu, David E. Fisher and Ya-Chieh Hsu. Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells. Nature 577, 676-681 (2020).

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監修者、ライター紹介

監修
荒瀬誠治 Arase Seiji
徳島大学医学部皮膚科学分野 名誉教授
毛髪疾患の専門医師として円形脱毛症診療ガイドライン作成委員長や、日独皮膚科学会会長を務めるなど、日本を代表する毛髪医療のスペシャリスト。
1947年生まれ。1974年徳島大学医学部卒業後、同大学皮膚科入局。1991年徳島大学医学部皮膚科教授となり、現名誉教授。
専門分野:皮膚付属器の文化機構(特に毛包の生物学)、光と皮膚(特に紫外線発癌、DNA修復、癌抑制遺伝子)

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監修・ライター
西村リサ Nishimura Risa
株式会社 sandalista 代表取締役
毛髪診断士認定講 師・コスメコンシェルジ ュ・WEB ライター
大手化粧品メーカーでメイクアップアーティストとして活動後、2008 年に独立。
自身の世界観を具現化するべく「sandalista(サンダリスタ)」を主宰。
スキンケア、ヘアケアに関する執筆活動や、講演、個別レッスンを通じ 多くの方に「善い美容週間の定着」を提案している。

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監修・ライター
横田淑美 Yokota Yoshimi
株式会社アドバンジェン 製品開発部部長
2008年株式会社アドバンジェン入社。「今日という日を、思いっきり楽しんでもらいたい」という願いを込めて製品開発に注力している。
1988年京都大学大学院・生命科学研究科修士過程終了(遺伝子操作・タンパク質解析研究)。1988年国内医薬品メーカー・応用生化学研究所入所。バイオセンサーの工業化に成功。2005年(国研)産業技術総合研究所勤務。バイオセンサーの研究に携わる。

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行方昌人 Namekata Masato
理学博士
1979 年生まれ。
専門分野:細胞生物学、細胞工学、毛髪科学

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